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業務内容

異議申立てを受けた特許権者のための情報

このページでは、特許異議申立てを受けた特許権者に役立つ情報をご紹介します。

異議申立てで特許が消滅するか不安です
 特許異議申立てを受けると、その特許が消滅する可能性があります。このため、特許権者は異議申立ての有無に関心があります。まず、特許異議申立てがされるケースは統計的には0.5%程度です。そのうち、特許異議申立てが成立するケースは約半分と推測しています。
 なお、日本国特許庁は、特許異議申立てがなかったことを特許権者に通知しておらず、特許庁も個別の問い合わせには対応していません。特許権者は、INPITが提供しているJplat-patの経過情報で、異議申立ての有無の情報を得ることができます。ただし、Jplat-patへのデータ入力は遅れがあるので、異議申立期間の経過後直ぐに見ても、特許異議申立てがなかったことを確認できません。
 特許権者の自衛策としては、特許査定時の分割出願があります。重要な特許であれば、特許査定謄本送達日から30日以内の分割出願する方法がありますが、現実的には難しいかもしれません。通常、分割出願は、出願時(出願日から30日以内)に審査請求をしなければなりませんが、審査を遅らせる工夫をすれば、特許異議申立ての審理の状況を見ながら分割出願の特許請求の範囲を補正することができます。

異議申立てを受けた後に分割出願はできますか?
 前項とも関係しますが、異議申立ての係属中に分割出願はできません。分割出願は特許出願の係属中にできるものであるところ(特許法第44条第1項)、異議申立てを受けているのですから既に特許が登録されており、特許出願は係属していないからです。
 分割出願ができないのなら、多段階の請求項を作成して、なるべく広い範囲で維持決定を得たいところですが、訂正による請求項の増加は制限があります。

異議番号通知が届きました
 第三者から特許異議申立てがなされたことが通知されました。直ちに特許が消滅するわけではありません。この段階で、特許庁への手続は不要なので、落ち着いて対応しましょう。
 異議番号通知が届いた場合、特許出願の委任状(個別委任状、包括委任状)に特許後の手続の委任が含まれていれば、特許出願を代理した弁理士宛に異議申立書の副本が送付されます。異議番号通知を受領したタイミングで代理人解任届(代理人辞任届)を提出すると、特許権者が異議申立書の副本を受領できます。異議番号通知から申立書の副本の送付までの期間は2~4週間なので、急いで手続をした方がよいでしょう。

特許出願を代理した弁理士でなくても特許異議申立ての手続ができますか
 はい、できます。
 特許出願を代理した弁理士は、特許発明の技術内容をよく理解しています。このため、特許出願を代理した弁理士による対応がよい場合もあります。
 一方、特許異議申立ては、特許庁の審査官や審判官を相手にする手続と異なり、異議申立人という相手方がいます。このため、出願の審査や拒絶査定不服審判とは手続が異なっており、経験が豊富な弁理士に依頼する方が安心です。
 なお、弊所では専門の弁理士が対応いたします。弊所でお受けできない技術分野もありますが、中途受任もお気軽にご相談ください。

異議申立書の副本が届きました
 特許庁からの送付状にも記載されているように、この時点で特許権者側がすべき手続はありません。取消理由通知書か維持決定書を待ってもよいと思います。あえて何かをすることをあげれば、以下の二つでしょう。
・異議申立人の素性調査
・異議申立人の主張に基づく特許性の検討

特許異議申立制度がなかった間の包括委任状は使えますか
 特許異議申立制度が2003年に廃止されて以来、一般的な包括委任状からは「特許異議の申し立て」の文言が消えました。しかし、包括委任状の委任事項に「すべての特許権に関する手続」が含まれていれば、特許異議申立てを受けた場合の手続についても委任があると判断できます。特許異議申立ての応答を弁理士に依頼するために委任状を準備する前に、包括委任状の内容を確認するとよいでしょう。
 また、上記の委任事項が含まれる包括委任状を援用した出願が特許になり、特許異議申立てがされた場合には、出願を代理した弁理士に特許異議申立ての手続きにも代理権があると解されるので、異議申立書の副本は代理人である弁理士宛に送付されます。

特許異議申立ての審理にかかる時間は
 特許異議申立ての審理は、最短では、取消理由が通知されずに維持決定になる場合で、申立期間経過後6か月程度のようです。通常は、2回の取消理由が通知されるので、異議決定までに1~2年の時間がかかると予想されます。

特許異議申立ての審理の進行を知る方法
 特許権者にとって、特許異議申立ての審理の進行、特に、異議申立人に意見書提出機会が与えられたかは関心があります。
 特許異議申立ての審理の進行は、INPITが提供しているJplat-patの経過情報の審判情報で知ることができます。ただし、Jplat-patへのデータ入力は遅れがあり、当事者が書類の送付を受ける方が早いようです。

特許異議申立期間経過前の審理
 異議申立書の副本を受け取った特許権者は、特許異議申立期間経過前審理の上申書を提出できます(審判便覧67-08)。通常、異議申立ての審理は、複数の申立を併合して審理するために、異議申立期間の経過後に開始されます。しかし、特許権者がこの上申書を提出すると、複数の特許異議申立の審理が併合されず、異議申立期間の経過前に審理を開始します。
 複数の特許異議申立ての審理が並行して行われることになれば、特許権者は、複数の特許異議申立ての審理に対応する必要があり、手続が複雑化し、特許権者及び特許庁の対応負担が増えることが予想されます。
 なお、この上申書は、相当早い時期に出さないと、審理が始まる前に申立期間が経過してしまい、通常の併合審理になることがあります。

意見書の「取消理由通知(決定の予告)の希望の有無」の欄の記載
 特許権者は、1回目の意見書において、早期に決定を得ることを目的として、取消理由通知(決定の予告)を希望しないことができます。
 新特許異議申立制度では、原則、2回の意見書提出(訂正請求)の機会が特許権者に付与されます。応答の機会は多いに越したことはありません。訂正請求の印紙代は高額になる場合もありますが、意見書だけの提出であれば特許庁に納付する印紙代は不要です。よって、早期に結論を得たいなどの特別な事情がなければ、通常は「希望する。」を記載する方がよいでしょう。

意見書提出期間の延長
 特許出願の審理では、意見書提出期間の延長が認められます。異議申立ての審理では、意見書提出期間の延長は原則として認められません。期間延長を必要とする合理的理由がある場合は、審判官に連絡し、具体的な理由を記載した期間延長請求書を十分な余裕をもって提出しましょう。審判長が期間延長をする合理的理由があると認めた場合、例外的に期間延長が認められることがあるようです。

訂正請求
 新特許異議申立制度では、取消理由通知が原則2回通知され、取消理由通知書に対して意見書提出(訂正請求)の機会が特許権者に付与されます。また、通常は、異議申立人にも2回の意見書提出(訂正請求)の機会が付与されます。特許権者は、2回の意見書提出機会を有効に活用して、広い権利を維持することが重要になります。この方針は、ケースによって変わりますが、以下の点がポイントになります。
・訂正請求の機会を何回使うか
・1回目の訂正請求でどの程度の訂正をするか
 訂正請求は比較的高額(数万~数十万円)の印紙代が必要になるため、費用対効果を考えると訂正請求の機会は少ないに越したことはありません。
 また、訂正請求をすると、通常は異議申立人にも意見書の提出機会が認められることから、2回目の意見書提出機会を異議申立人に与えない方策も検討に値します。また、1回目と2回目の訂正請求で異議申立人に意見書提出機会を認める基準が若干異なることから、2回目の訂正請求後の異議申立人の意見書提出機会を封じる方策もあると思われます。この辺りは、新特許異議申立制度におけるノウハウの蓄積を待つことになるでしょう。
 2015年11月1日に特許法施行規則第25条の4第1号が改正され、訂正の請求に係る請求項の考え方を変更しました。訂正請求のコストを低減できる、この改正にも注意が必要です。また、訂正請求書の様式も変更されています。

訂正拒絶理由通知を受けました
 訂正請求後の発明が訂正の要件を満たさない場合、訂正拒絶理由が通知されます。特許権者は訂正拒絶理由通知に対して訂正請求書(訂正明細書)を補正できます(特許法第17条の5第1項、第120条の5第6項)。訂正明細書の補正は、訂正事項の削除、請求項の削除など特定の場合しか認められません。
 訂正明細書の補正は、平成11年以後、特許庁の運用が変わっているので注意が必要です。

審判官との面接
 新特許異議申立制度では、原則として、特許権者には審判官と面接をする機会が与えられるので、この機会を有効に活用することが望まれます。面接ガイドラインでは「権利者側の代理人等から面接を要請された場合、審理期間中少なくとも一度は面接を行うこととします。」と規定されました。
 特許権者と審判官との面接は口頭審理ではないので、異議申立人の同席は認められません。両当事者を同席させた面接は、実質的に口頭審理になってしまい、新特許異議申立制度において書面審理を採用した趣旨が没却されます。異議申立人には、面接が行われた旨の通知がされませんが、経過情報や包袋閲覧などで面接が行われたことを知ることができます。

特許異議申立ての決定がされました
 特許異議申立ての決定された場合、決定の内容を確認しましょう。決定には維持決定と取消決定があります。
 異議申立てが成立すると、取消決定がされます。この場合、少なくとも一部の請求項について特許異議申立てが認められ、特許権の一部が消滅します。取消決定書の以下の点を確認しましょう。
・どの請求項が取り消されたか
 特許異議申立ての決定は、請求項ごと(一群の請求項ごと)になされ、効果が生じます。つまり、請求項ごと(一群の請求項ごと)に特許権が消滅することになります(特許法第114条3項、第185条)。
・訂正は認められたか
 特許権者がした訂正請求のうち、どの訂正が認められているかが取消決定書に記載されています。訂正によって特許が維持されれば特許異議申立てに対する防御はひとまず達成したといえます。
・取消理由は(客観的に)納得できるか
 取消理由が不適法である場合、特許権者は、取消決定に対する取消訴訟を東京高等裁判所(知財高裁)に提起することができます(特許法第178条1項)。

 一方、維持決定が出た場合、特許異議申立てが認められずに特許権が存続します。維持決定書の以下の点を確認しましょう。
・どの請求項が維持されたか
・どの訂正が認められたか
・異議申立人は、維持決定に対する取消訴訟を東京高等裁判所(知財高裁)に提起することができません(特許法第178条1項)。異議申立人が、維持決定に納得できない場合は無効審判を請求することになります。

特許異議申立制度の概要

特許異議申立制度の詳細

旧特許異議申立制度との違い

無効審判や情報提供制度との違い

特許異議申立ての手続の留意点

特許異議申立てをするときに役立つ情報

特許異議申立てを受けたときに役立つ情報


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